成年後見人

 現在の成年後見制度は、平成12年4月にスタートしました。しかしながら、諸外国と比べれば、社会に定着しているとはいいがたい状況が続いています。この制度が社会に定着し、一般の方がその利益を享受するためには、我々司法書士のみならず、一般の方の理解が必要不可欠と思います。
成年後見人として活動している司法書士は、多く存在しております。
ここでは、成年後見についての、いろはの「い」を御紹介させていただきます。 詳しくは、お住まいの都道府県に置かれている司法書士会にお気軽にご相談いただければと思います。


Q1.成年後見制度の目的・種類とはどのようなものですか?
Q2.成年後見制度を利用するための申立は、誰ができますか?
Q3.成年後見人が決まるまでの流れを教えてください。
Q4.成年後見人の仕事内容を教えてください?
Q5.財産管理をする場合、何に気をつけなければなりませんか?
Q6.成年後見制度申立費用は、どのくらいですか?誰が負担しなければなりませんか?
Q7.申立後、家庭裁判所に対して報告が必要と聞きましたが…
Q8.成年後見人等の報酬は、どのように支払われるのでしょうか…
Q9.どういう場合に、後見手続きが終了するのでしょうか…
Q10.任意後見制度について、教えてください。


成年後見制度の目的・種類とはどのようなものですか?
「自己決定」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」と「本人の保護」との調和が目的です。
精神上の障害により事理を弁指揮する能力を欠く者 = 後見相当
同能力が著しく不十分な者 = 保佐相当
同能力が   不十分な者 = 補助相当  の2つの類型に分類されます。簡単に言えば、判断能力の衰えが大きい方から、後見>保佐>補助 の2つの類型に分類されることになります。成年後見人は、成年被後見人(判断能力が衰えてきた方)の財産管理・身上監護が主な仕事となります。
一方、成年保佐人は、民法第12条所定の行為(例えば、不動産に関する権利の特喪)を、成年被保佐人がする場合、同意を与えること等が仕事になります。
成年被補助人は、成年被保佐人に比べるとより、自己決定権の範囲が広がり、成年補助人は、民法12条所定の一部の行為について、同意権を持ちます。また、成年保佐人・補助人は、被保佐人・被補助人に代わって、一定の行為について、代理権を行使することができるようになりました。

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成年後見制度を利用するための申立は、誰ができますか?
成年後見制度の申立は、本人・配偶者・四親等内の親族等から可能です。また、親族等の申立が期待できない場合に備え、市町村長が申し立てる制度もあります。
また、例えば、保佐制度利用中に、保佐人が、成年後見開始の審判申立ができることから、一度、審判がおりたとしても、各制度をいつまでも利用しなければならないわけではありません。

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成年後見人が決まるまでの流れを教えてください。
成年後見人の申立は、被後見人(判断能力が衰えてきた方)の住所地の家庭裁判所になります。家庭裁判所は、申立後、
★調査・鑑定(調査官による本人の調査・関係者の事情聴取・判断能力についての鑑定等)
★審判(成年後見人等の選任)
★本人と申立人に結果を通知(法務局に後見登記)後見開始ということになります。
事例によって異なりますが、申立後後見が開始されるまで、約2~2カ月かかるということになります。

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成年後見人の仕事内容を教えてください?
「財産管理」と「身上監護」に大別されます。
★「財産管理」とは、財産の管理を目的とする行為で、対象となる財産に制限はありません。具体的には不動産の売買、賃貸借、担保権の設定、預貯金の出し入れ、年金等の給付金の受領保険料・公共料金の支払い、遺産分割協議等多岐にわたります。
★「身上監護」とは、成年被後見人の身上に関する一切の事項です。本人に必要な介護サービスのコーディネート、例えば、ホームヘルパーの派遣、かかりつけ医師の往診、訪問介護サービスの依頼等、こちらも多岐にわたります。これらの仕事は、いずれも成年被後見人のためになされることが必要です。
また、本人の意思を十分尊重しなければなりません。(成年後見 実務マニュアル 社団法人日本社会福祉会著 参考)

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財産管理をする場合、何に気をつけなければなりませんか?
財産管理とは、管理することを意味します。財産運用ではありません。成年被後見人の毎日の生活のために、被後見人の財産を管理し、生活支援することが基本です。管理の対象ごと、工夫することが必要になります。
例えば、金銭については、当面必要な額は、普通預金にする。支出が予定されていない額については、危険がすくない銀行を選択し、長期定期預金にする。株券等の有価証券については、適宜権利行使をし、下落リスクを回避するために、適宜な時に現金に換える必要もあるかと思われます。
また、金銭の出入はその都度通帳に記帳し、領収書は必ず保管し、財産管理記録を作成、少なくても10年間は、保管する必要があります。財産運用でないので、元本が保証されていない投資商品・金融商品に投資することはできません。(成年後見 実務マニュアル 社団法人日本社会福祉会著 参考)

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成年後見制度申立費用は、どのくらいですか?誰が負担しなければなりませんか?
申立費用は、原則として申立人の負担になります。 
★申立手数料 600円(収入印紙)
★郵券(切手) 2000円~2500円程度(提出先の家庭裁判所に確認してください。)
★「登記手数料 4000円(登記印紙)
★鑑定費用 10万円~15万円
(成年後見・保佐の開始審判の場合、原則として要します。しかし例えば、いわゆる植物状態にある場合などは、鑑定を要しないとされています。)また、法律扶助制度を利用することもできます。

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申立後、家庭裁判所に対して報告が必要と聞きましたが…
簡単に言えば、家庭裁判所が必要とした場合、いつでも財産状況等の報告を求める事ができます。一方、成年後見人は、定期的に、半年~1年に1回、家庭裁判所の指示に従って定期報告を行います。定期報告には、準備が必要です。
★「財産管理」について
① 財産目録
② 財産の動きや収支がわかる年間収支表、金銭出納帳
③ 記帳済みの預貯通帳
④ 株式売買報告書、保険証書等、登記簿謄本
⑤ 領収書等の出金に関する証拠書類
★「身上監護」
① 後見日誌など
また、裁判所に対する報告とは別に、家族に対しても、十分配慮した報告をしなければなりません。

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成年後見人等の報酬は、どのように支払われるのでしょうか…
家庭裁判所は、成年後見人等および成年被後見人等の資力その他の事情によって、成年後見人等の財産のなかから、相当な報酬を成年後見人等に与える事ができます(民法第862条等)。
簡単に言えば、後見人の報酬は被後見人の財産の中から、家庭裁判所が決めた額の支払いがなされます。具体的な手続きとしては、家庭裁判所に対し報酬付与の審判の申立をすることになります。
報酬付与の可否・金額を決定する要素としては、被後見人の資力、職務期間、事務内容、成年被後見人の職業、後見人と被後見人の関係等が考慮されます。親族が後見人になった場合の報酬は、無償ということもあり得ます。
また、そもそも収入を得るための手段ではなく、そのような目的で後見人になろうとする親族は、排除される可能性が高いと言えます。

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どういう場合に、後見手続きが終了するのでしょうか…
成年被後見人の死亡、後見開始の審判の取消があげられます。一方、成年後見人の死亡、辞任、解任等によって、成年後見人が後見手続きから外れることがあります。
成年後見人は、正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができます(民法844条等)。
具体的には、体調不良等が挙げられます。また、不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由があれば、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人本人・親族、検察官等の請求により、後見人を解任することができます(民法846条等)。
また、成年後見人が損害を与えた場合、その損害を賠償しなければなりません。また、業務上横領等の刑事責任を問われることもあります。(成年後見 実務マニュアル 社団法人日本社会福祉会著 参考)

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任意後見制度について、教えてください。
任意後見制度とは、公正証書をもって、任意後見契約を結ぶ方法による新しい後見制度です。
本人が意思能力の確かな時に締結した任意代理の委任契約に対して、本人保護のための最小限の公的な関与を法制化するために作られました(新しい成年後見制度 商事法務 参考)例えば、契約当初は委任契約に基づく代理人(任意代理)として本人のための事務を執行、本人の意思が低下した時、任意後見監督人の選任申立をして、任意後見人に就任する形が挙げられますが、契約者個人の実情にあった契約を作成することになります。
細かい点は、お問い合わせいただければと思います。(成年後見 実務マニュアル 社団法人日本社会福祉会著 参考)

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